子宮頸部上皮内腫瘍に対する一般的な管理治療は軽度異形成〜中等度異形成はの場合、厳重に経過観察、高度異形成以上で子宮頸部円錐切除術とされています。しかし、何年経っても消失しない軽度~中等度異形成症例の存在や子宮頸部円錐切除術がその後の妊娠へ影響(子宮頸管短縮による切迫早産・前期破水)を及ぼすこと(子宮頸管短縮による切迫早産・前期破水)があり、それ以外の管理・治療法が望まれます。そこで当クリニックではそのような症例に対してレーザー蒸散治療を積極的に行ってきました。
この治療法レーザー蒸散治療は体への侵襲が最小限のため、これらの妊娠への悪影響や術後の出血トラブルなどは一切発症せず良き治療であると考えています。しかし事前に異形成〜初期子宮頸がんを正しく鑑別診断するのは容易ではないこと、蒸散のため手術時組織検体がとれないこと、治療の適応範囲が狭い、不完全蒸散による再発などの理由からあまり一般的に行われていないのが現状です。異形成〜初期子宮頸がんはきちんと鑑別できれば必ずベストな治療法がおのずと見つかってきます。そのため当施設では検査の精度や質を少しでも上げるように常に細かい工夫を行っております。
細胞の採取の仕方に細心の注意を払い、細胞固定方法、そして採取器具まで吟味します。細胞診は異形成を見つけるきっかけや診断の基本になるため、コストを度外視して検査にあたります。
また細胞診異常結果については細胞診専門医である院長自ら再鏡検(プレパラートをみること)を行い、その診断精度をあげています。
もちろんスクリーニング目的の細胞診(レディースドック、区がん検診、一般診察)に対しても同等の質を保つように努力しています。
年齢や子宮腟部の形状、コンディションにより採取の仕方を細かく変えています。またディスポーザブル採取器具も吟味し、たとえコストがかかっても患者様ごとに最も適したものを選択しています。腟内のコンディションにより正しい結果がでないと予想された場合、検査延期をお願いする事もあります。
【液状化検体細胞診(LBC法)】
従来法では採取器具にて採取された細胞をその場で医療従事者(多くは看護師)がプレパラートへ直接塗抹させ、薬液で固定しその後染色と診断を検査室で行ってきました。一方、液状化検体細胞診(LBC法)では細胞を採取した器具をそのまま保存容器に入れるため、塗抹・固定に作業による不適正標本発生を防ぐことになります。当施設では原則としてLBC法を採用しています。下に従来法とLBC法の違いを示します。
従来法 | LBC法 | |
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長所 | 安価である(医療側にメリット) | 塗抹不良、乾燥標本の予防 HPV検査を同時に行える 鏡検時間の短縮 |
短所 | 塗抹不良、乾燥標本がみられる | 高価である(医療側にデメリット) 特別な採取器具、細胞保存液容器が髙コストであり、 その保管場所も必要とする |
【細胞診結果の再チェック】
当クリニックで施行した細胞診結果で異常がみられる、あるいは他の検査で異常が示唆されたケースはすべて(区がん検診を除く)プレパラートの鏡検を細胞診専門医である院長が行って確認しています。
子宮腟部および頸管内に対する丁寧な前処置を施すことにより隠れていた病変も明らかにできます。さらに見逃されやすい腟壁から子宮頸管内まで可視範囲にあるところをじっくり細かくチェックします。当院では異形成という病気をご理解いただくため、患者様に必ず画像化した所見をお見せしわかりやすくご説明いたします。
異形成レーザー蒸散手術成功の可否はこのコルポスコープによる病変全体の把握にかかっており、異形成の診断において最も力を入れている検査の一つです。
確定診断のためにはきちんとしたコルポスコープ下での確実な組織採取が必要です。一方、この検査は不要な痛みや検査後の出血でいやな思いをすることがあります。
当院では細胞診とコルポ診の精度を上げているため、異形成の経過観察で毎回組織診を行うようなことはしていません。
また検査の際に極力痛みを感じさせず、出血のトラブルを最小限にする工夫を行っていますので安心してお受けください。
軽度〜中等度異形成は、感染しているHPVの型により、その予後が大きく変わります。
当施設ではHPVタイピング検査を施行し、その結果を参考にして管理・治療方針を決めます。